花と実と魔女と

フェルメール





20005年  1月    ルーブル






前回、時間がなくて見ることの出来なかった
フェルメールの「レースを編む女」
縦24センチ、横21センチという小さな画面に
光と色彩が絶妙なタッチで描かれています。

モナリザのあるドノン翼と反対側の
レースを編む女のあるリシュリュー翼は結構遠いので
ルーブルを数時間で見て回るのは体力が要ることでもありますね。


どうにか今回、念願のフェルメールをじかに見ることが出来、
ルーブルでの希望のひとつが叶いました。








20005年  7月



ゴッホとフェルメールを訪ねて☆オランダ 17





アムステルダム南西に位置するハーグは
現在オランダの政治と行政の中心となっており
写真のビネンホフという所に
13世紀から17世紀にかけて建てられた由緒ある建築物が集まっています。




写真は国会の開会式が行われる
「騎士の館」と呼ばれている13世紀にフロリス5世が建てた国会議事堂。



左右に塔を持つレンガ造りのゴシック建築で
どっしりとした威厳のある作りはコンパクトながら歴史が感じられ、
日本の国会議事堂やアメリカのホワイトハウスとは違った趣があります。















こちらは総理府や外務省がある建物で、
今尚、歴史的建物で国家の重要な会議が開かれ
政治と行政がつかさどられていることに新鮮な驚きを感じます。


前の広場には19世紀建造の美しい噴水があり
お堅いはずの行政府の建物にさえ、親近感を覚えました。














一番上の写真の国会議事堂の脇をとおっていくと、
ビネンホフ地区の一部にあるのが
フェルメールの作品が展示されている
「マウリッツハウス王立美術館」




オランダで見る最も美しい建物の一つとされる美術館ですが
思ったよりもこじんまりとした建物で、
1644年完成したヨハンマウリッツ公の邸宅が国家に買い上げられ
1822年、マウリッツハウス美術館として歩み始めました。



オランダのフランダル絵画の珠玉作品を集めたオランダを代表する美術館。



外側にも看板代わりとして
フェルメールの真珠の耳飾の少女がかかっています。



















こちらがフェルメールの
「真珠の耳飾の少女」
別名「青いターバンの少女」
(1665年完成・46.5×40センチ)





実際にこの絵の前に立つと、振り向く少女の無防備な表情から
声をかけたのがごく親しい人か、
信頼を寄せている人であることが伺われます。
(この絵のモデルがフェルメールのお嬢さんだという説あり)




そして肩越しにこちらを見ている瞳と目線を合わせようと試みたのですが、
こちらを見ているようでもあり、見てない様でもあり・・・
観ればみるほど不思議さが募る絵なのです。




少女というには大人の雰囲気を漂わせているこの一枚に
どれだけの人が魅せられているでしょう・・・




この不思議な感じ、クールでさめた視線と不思議な表情から
「北方のモナリザ」とも呼ばれています。




どちらにしても、
少女の大きな瞳がこの絵の物語性をいやがうえにも増しているのです。

















生涯に三十数枚しか残さなかったといわれるフェルメールのもう一枚の代表作、



「デルフト眺望」(1659~60年)





こちらは96.5×115.7センチと、
真珠の耳飾の少女よりはだいぶ大きい作品です。





作品のほとんどが室内画のフェルメールが
二点しか風景画を描いていません。
一つがアムステルダム国立美術館の「小路」
もう一つがこの「デルフト眺望」です。





この作品の前に立って実感したのは絵の中心から放たれる光。




この光が、
飾ってある美術館の室内にまで差し込んでくる感じがするのですから・・・



画集や写真などでは
川面の影が作品の光を吸い込んでしまっていて
この光を感じ取るのは難しいかもしれませんが




ゴッホの実物に出会ったときのように、
この作品の前に立つと、作品の放つ「光」は目を通して、
心の中まで、まっすぐに届いてくるのです。




20007年  7月   ウィーン







そして、大好きなフェルメールの一作がここに!!
「絵画芸術の寓意」

この絵は、フェルメールの没後も
未亡人の手元に遺されていた作品。
第二次世界大戦中ヒットラーが手に入れたものを
終戦後、ここ美術史美術館に返還されたという作品。

画家という職業そのものを讃えるかのような
崇高な雰囲気が感じられます。

ウィーンのこの美術館には、
オランダの偉大な画家レンブラントの作品もあり
意外にもフランドル=ネーデルラント絵画の宝庫だと言うことができます。












2008・8・18


猛暑の中観てきました~ ☆ フェルメール展 







8月15日、朝9時15分頃着いた
東京上野・東京都美術館。

想像を超える猛暑に、
まだ朝9時過ぎとは思えません・・・
上野駅に降り立ち、パンダ橋!を渡るだけで
暑さにクラクラっとしましたから(笑)

でも、ラッキーなことに待ち時間0分。
画面左側の0分は本当でした!
(実は、携帯iモードでも
待ち時間チェックしたんですヨ!)

過去最長の待ち時間を経験した
横浜美術館でのゴッホ展を思い出しながら
悠々、チケット売り場までの階段を下ります。

これは、以前何かの美術展で
チケットを上野公園口で買ったものの
あまりの待ち時間に、あえなく挫折した苦い経験から
入り口で買うことにしていたのです。(~_~;)







と言うわけで、無事入場!
順を追って観て行くと
お目当てのフェルメールは最後の展示になるので
同時代のデルフトの巨匠たちには申し訳ないけれど、
迷わず、まっしぐら・・我がフェルメールへ。

最初の作品は、
「マルタとマリアの家のキリスト」
(エジンバラ スコットランド ナショナルギャラリー蔵)

フェルメールの若いころの作品とされています。
(今日の写真は全て、画集を写したものです)

新約聖書の宗教主題を描いていますが
他の画家達の描き方と異なり
かいがいしくイエスをもてなすマルタ
(この時イエスは決してそのことを褒めてはいない)を
フェルメールは中央に配しているのが特徴的。








今回来日しているフェルメールの作品2作目は
「ディアナとニンフたち」

この作品は、フェルメールによる唯一の神話画。
しかし、足を洗うという行為に
キリスト教的解釈を重ねて読み解かれることが多い作品。



女性の内面に静かに焦点をあてた
風俗画が多いフェルメールの初期のころの作品は
こんな感じだったのだな~と
興味深く見ることができました。
因みに、この絵はオランダハーグの
マウリッツハウス王立美術館蔵。

おそらく、一昨年わたしがオランダに行ったとき、
貸し出し中だった作品で初対面の作品。
こうして、
作品の方が空を飛んできてくれて嬉しかったです。

もっともマウリッツハウスでは
もし出会っていても
「真珠の耳飾の少女」の絵の影に隠れて
印象が薄かったのかも・・・正直(~_~;)







そして、こちらが
「小路」(1658-1660年頃)
(アムステルダム国立美術館蔵)
フェルメールの現存する風景画2点のうちのひとつ。

17世紀中期の都市景観画として、
フェルメールが先駆者的役割を
見事に果たした作品とされています。

モデルとして描かれたとされる場所が
幾つもあげられていることからも
この絵が今尚、
デルフトの人々の誇りであることが伺われます。

数少ない人(女性と子供)を配することによって
描かれた「家」が「家庭」となり
時代と国を超え、人々の静かな暮らしの営みが
絵の中から確かに感じ取れる・・・というということに、
フェルメールの絵の普遍性を感じます。

画布は、53.5×43.5センチと決して大きくはなく、
人の顔も明確ではない、子供といったら背中だけ・・
なのに、
ひたむきに仕事や遊びに熱中している表情までも
見えるということの凄さ、
白く塗られた壁やレンガの質感、

手前に敷かれた石畳から
雲の沸き立つ空までの空間表現に、
この町に、350年の時を超えて、
今佇むことができる・・・

その幸せをフェルメールは、
確かに私にプレゼントしてくれました。

暑い、東京の2008年の夏に・・・・

(明日につづく)










2008・8・19


猛暑の東京で観た ☆ 魅惑の フェルメール展 その2






昨日に引き続き、
東京都美術館で開催中のフェルメール展に
出品されている作品を図録の写真からご紹介します。

上の作品は
「ワイングラスを持つ娘」(1659-1660年頃)
(ブラウンシュバイク、アントン・ウイリッヒ美術館蔵)

フェルメールの描いた
陽気な仲間達を主題とする作品で
最もイキイキとした絵画の一つといわれます。







「リュートを調弦する女」(1663-1665年頃)

フェルメールの円熟期の作品で
左手の窓から差し込む光。
この構図はフェルメールではおなじみですが
窓の外へ視線をむける女性の眼差しが
全体のにじんだ様な絵の中で特に印象的です。

そして、背面に架けられた地図の水平な飾り棒が
その眼差しと同じ高さで外部への視線を後押ししています。

女性は、外部の何かに一瞬気をとられているのでしょうか。

それにしても、毛皮の着いた優雅なシルクの上着、
マリーケ・デ・ウィンケルによれば、
当時の中上流階級の普段着だとか・・・
家事一切は召使がしてくれるとしてもスゴイ!
クリーニングしにくいだろうし・・・

ただ、フェルメールの作品には
このイエローの上着度々登場します。
手持ちだったのかも・・・

そしてフェルメール独自の
天然ウルトラマリン
(ラピス・ラズリ)の顔料との色の対比も良いし、
お気に入りだったのは間違いないのでしょうね。









「手紙を書く婦人と召使い」(1670年頃)
(アイルランド・ナショナルギャラリー蔵)

左の窓から差し込む光を受けて
ひたむきに手紙を書く婦人。

この時代のオランダは郵便制度が始まり
手紙のやりとりができるようになったようです。

社会進出しない時代の女性達が
遠くに出かけている
(「東インド会社」の時代ですから)
愛しい人の下へ手紙をしたためていたことでしょう。

足元に落ちたままの手紙の下書き
(あるいは届いた手紙)、
中央にどっしりと立ち
何やら外の様子に気をとられている召使い、
手前に下がる黒っぽいカーテンの仕切りにより
鑑賞者はこちら側の部屋から
絵の中の様子を垣間見ている感じ・・・

フェルメールの様々な工夫が
鑑賞者の想像力をかきたて
一遍の物語の世界へ誘います。

静かな世界に日常的なモチーフを取り入れ
女性達を描くフェルメールの風俗画は
宗教画にはない親しみやすさと
にじむような色彩と光の粒子により表現された
画面の持つ柔らかさが
私たち日本人(特に女性)の共感を得
人気がある所以かもしれませんね。







フェルメールの現存する絵画は
すべてあわせても37作品だけということもあって、
ドイツ、イギリス、オランダ、フランス、アメリカと
所蔵美術館を回って
全踏破するというマニアも少なくありません。
(残念ながら盗まれて現在行方不明作品もあります)


なおかつ個人所有の作品は、
個人が貸し出さなければ、見ることは不可能。

そして、今回はその個人所有の最後の1作品が
出展されていることも見所のひとつです。

それが、
「ヴァージナルの前に座る若い女」
(個人蔵)

この魅力的な小品は25.2×20センチ。
本当に小さく思わず近づいて覗き込む大きさ。
これは、ルーヴル美術館で観た
フェルメールの「レースを編む女」とほぼ同寸。
(作品としては「レース・・・」の方が好き!)

音楽に関する主題は
フェルメールの作品群にしばしば観ることができ
ヴァージナルも類似作はありますが
何せ個人コレクション、
今回の展覧会に
足を運んで良かった!と思わせる一点でした。

そしてこの作品が、現存する37番目の
フェルメール作品とされています。




*・゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。..。:*




フェルメールのことになると、
俄然熱くなり(笑)2日にわたり
くどくど書いてしまい失礼しました。
(*- -)(*_ _)ペコリ

(なにせ、一昨年現地で「牛乳を注ぐ女」を見た瞬間に
フェルメールの世界に引き込まれてしまったもので・・・)

12月4日まで東京都美術館で開催されている
「フェルメール展」にお出かけになると
17世紀オランダの
謎めく世界に素敵にワープできますよ。

尚、フェルメールに関する本も沢山ありますので
もし少しでも興味をもたれたら
お読みになってみることもお薦めします。


「絵画ってほんとうに良いですねっ」(^.^)


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